普段使うAIに、自分あてのスカウトメールを書かせた
参加者は普段使うAIに自分あてのスカウトメールを書かせた。AIは対話の記録の端々から思考の癖や強み・弱みを推し量り、驚くほど具体的なポジションを勧めてきた。中身は人によって系統がまるで違い、本人も言い表しにくい暗黙知が記録の断片から浮かぶことを体感した。
参加者は普段使うAIに自分あてのスカウトメールを書かせた。AIは対話の記録の端々から思考の癖や強み・弱みを推し量り、驚くほど具体的なポジションを勧めてきた。中身は人によって系統がまるで違い、本人も言い表しにくい暗黙知が記録の断片から浮かぶことを体感した。
続けて手元のAIに、できること・実績・苦手なこと・制約・やりたいことをまとめた自分の人物像と、自分の困りごとを解決してくれる人を求める架空の求人票を書かせた。AIは苦手なはずの領域やそれを補う工夫にまで踏み込んだが、あくまで会話の記録に基づく推測でもある。
指示文とデータを手元のAIに渡してマッチングのコードを書かせると、Geminiはキャンバスで書いてColabへ移せ、Claudeは軽量なモデルでも数十秒で書いた。一方で無料版のサービスによってはコードを返さないこともあり、無料枠の水準の差と、一つのサービスに頼る怖さも知った。
人材100名と求人60件の組み合わせは6,000通りで、人にも対話型のAIにも余る。AIを使わず単語の近さで探せば約3秒だが、「苦手」とあっても同じ語があれば近いと判定してしまう。AIに全文を読ませると、言葉が近い人より実質的に合う人が理由つきで選び直された。
求人60件すべてについてAIに候補を選ばせても、2〜3分・14〜15円ほどで終わり、全員が一斉に動かしても止まらなかった。かつて10人がかりで求人票を読んで決めた作業、専門家に数百万円で頼んだ規模のマッチングが、ほぼ無視できる費用で手に入る。
最後に、先に書いた自分の人物像と求人票を100名・60件の中に加えると、自分に最も合う求人と、自分の困りごとを解いてくれる人材が返ってきた。手元のAIだけでは実在しない理想像を前提にした答えになるが、実在の候補から選ばせると、現実的でまるで違う答えになった。
人材100名・求人60件の題材は、すべてAIが作ったダミーだった。参加者はデータと作り方のコード、マッチングの指示文とノートブックを持ち帰った。題材を入れ替えれば社内の配置や商品の提案にも使え、ダミーで動かして見せれば、説明だけでは動かない稟議にも伝わる。
参加者を一つの小さな組織に見立て、AI活用のコツを各自が投稿すると、AIがその場で束ねていった。人には見渡せない約100件をAIはすべて読み、前提や役割を示す、制約を与える、あえて別の視点を取らせる、出力を検証する、実務に組み込む、といった塊にまとめた。
各自が困っていることと力になれることを投稿すると、AIが両者を突き合わせ、300通りほどの組み合わせを確かさに応じて示し、その型まで括った。速さを優先した軽めのモデルでは的外れな組み合わせも混じったが、誰の得意が誰の困りごとに効くかを、その場で見つけた。
人材戦略を立てるゲームで、AIで浮いた仕事のぶんの人員を、退職・転籍の支援、既存職種へのリスキリング、新事業へのリスキリング、新規採用にバーで振り分けた。言葉だけでは済まず、数字で立場が決まる。追加開催では、削減せず外から採る拡大型を選ぶ人が多かった。
前回の事業構想は誰か一人に深く刺されば成り立ったが、人材戦略は社長・投資家・社員・採用候補者の誰かが強く不満なら動かない。投資家が納得しなければ成長が止まり、社員が納得しなければ人が離れ、候補者に魅力が伝わらなければ採れない、という利害の衝突と向き合った。
参加者はAIが演じる関係者たちに仮想でヒアリングし、ビジョンや社内向けのチラシ、採用サイトまでAIで作って案を練った。関係者の声はやや辛辣に振れたが、AIの声は厳しくも甘くも設定できる。打ち出す前に反応を洗い出して直せること自体が、AIならではの使い道だった。
追加開催の最後に、暗黙知の表出や人と仕事のマッチングをAIで進める会社が現れた業界で、数年後に競争優位の源泉の何が効かなくなり何が効くかを自業界で考えて投稿した。AIが束ねると、知識の蓄積から共感と言語化へ、個人の抱え込みから共有へ、という転換が浮かんだ。
追加開催では、コードを書かない戦略の課題と、手順書つきで仕組みを再現する実践の課題を、それぞれ3段階で進める一式を持ち帰った。取り組んだ記録はコミュニティの掲示板に残し、次の回の冒頭で紹介される。
AIに全文を読ませると、一見畑違いの経歴の候補が、変化より正確さを重んじる姿勢ゆえに保守的な組織の求人に向くと選ばれた。言葉が一致した候補は、現状への危機感が強いため実は合わないという逆転まで、理由つきで示された。
人材戦略を立てるゲームでは、浮いた人員の行き先をバーで決めると合計が自動で調整され、人件費が膨らむ配分には、それで大丈夫かと問い返された。人員の計画は掛け声でなく、費用の裏づけとともに数字で決めるものだという手触りが残った。
意見を束ねるAIには、あえて順位を付けさせず、分類だけをさせる設計だった。集合知は溜まっても引き出せず、声の大きい人に寄りがちだという弱みに対し、どの意見が上かでなく、どんな考えの塊があるかを全員で眺める形になった。
意見を束ねる道具は、当初は機能を盛り込んだ別の構想だったが、作ってみて使えないと分かり、大きく作り変えられていた。その舞台裏を全員で確かめた。かつて数か月から1年がかりで構想した規模が、実質2週間ほどで形になっていた。
セッションで省いた題材として、経営者と現場の管理職が外部からの提案をめぐってすれ違う筋書きを持ち帰った。AIに経営者の本音、それを聞いた現場の本音、さらにそれを受けた経営者の考えを順に語らせると、どの会社にもあるすれ違いが立ち上がる。
人材戦略を立てるゲームでは、配分を決めるだけでなく、ビジョンや標語、社内向けのチラシ、採用サイト、AIを組織に入れていく道筋の図までAIで作った。同じ戦略を、社内で働く人に向けた言葉と、社外の候補者に向けた魅力の両面で打ち出した。
セッション発言録 第3回・「導入・全体の地図」の節「第1回は人間の認知容量を超えていくという話、第2回はAIによる戦略の転換をAIを使って考える話をしました。今日は組織レイヤー ― 組織とか人間とか知識とか、そういったものをテーマに置きます。第1回とも第2回ともだいぶ違う切り口です。」
セッション発言録 第3回・「AI前提の人材課題」の節「AIの使い方は『○○について教えて』という対話・指示待ち型から、『調べておいて』でAIがチームで動く半自動・連携型へ。さらに黒子型では、人間が会議をした、資料を作った ― その落とした情報をAIが拾って整理し続ける。対話的な指示がなくても働き続け、やがて自発的に検討して必要なときに連絡してくるエージェンティックAIになっていきます。」
セッション発言録 第3回・「AI前提の人材課題」の節「人間同士も、それぞれ異なる形式知・暗黙知を持って協働し、資料や議事録に情報を落としていきます。これからはAIもそれぞれ役割や知識を持ってお互いに協働・意見交換し、人間が落とした情報を拾って整理を進める。人間とAIがそれぞれチームで協働する世界です。」
セッション発言録 第3回・「全体の地図」の節「暗黙知を形式知にし、また暗黙知へ戻す ― 知識創造経営は長く語られてきましたが、『暗黙知を表に出す』工程が人手に依存していたために回りきらなかった。そこをAIで加速して、実効性ある知識創造経営にできるかが今日の問いです。」
セッション発言録 第3回・「今日のテーマ進行」の節「[2A]人が持つ知を流す ― 見るのは個人個人の頭の中、課題は本人も言語化できない暗黙知。[2D]知と人と組織を結ぶ ― 見るのは個人と組織の接続点、課題は溜まっても引き出せない、声の大きい人に寄る集合知。[2E]人的資源を配分し直す ― 見るのは組織全体のポートフォリオ、課題は削減か新価値創出か、そして誰の納得が必要か。」
セッション発言録 第3回・「アイスブレイク/ハンズオン①」の節「自分を知っているAIに、自分あてのスカウトメールを書かせてみてください。思考の癖とか、ここは苦手なはずだ、でもこんな工夫をしている ― そういうものまで出てきます。結局それは会話歴というログに基づいて作られている。暗黙知はとても言語化しづらいけれど、記録として残ったものの端々から見つけ出すことは可能なんです。」
セッション発言録 第3回・「ハンズオン②マッチング」の節「人材100名と求人60件。この時点でもう人間の認知の限界を超えます。対話型に丸ごと投げれば多少は読んでくれますが、100×60で6,000通りの線が引ける。6,000通り全部を考えてと言っても不可能なサイズです。だからシステムから解くわけです。」
セッション発言録 第3回・「ハンズオン②マッチング」の節「単語の近さだけで探すのは、実はAIを全く使わない昔からの方法でできて、6,000通りが3.2秒で終わります。めちゃくちゃ速い。でも語彙が似ているかを見るだけなので、『その分野は苦手』と書いてあっても同じ語が出れば近いと判定してしまう。AIに全文を読ませると、言葉が一番近かった人よりも、内容の文脈まで考えるとこっちの方がいい、という別の人が選ばれ直します。」
セッション発言録 第3回・「ハンズオン②マッチング」の節「60件の求人に100人を突き合わせて、僕の環境で125秒・14〜15円ほど。単純計算で900件でも300円ぐらいで本処理が終わる。昔なら10人がかりのチームが必死で求人票を読んで決めていた作業が、一瞬で終わってしまう。社内でこれを使うかどうかで、人材リソースの適正配分の巧拙が全然違う時代です。」
セッション発言録 第3回・「ハンズオン②マッチング」の節「手元のAIが作る『あなたに合う求人』は、実在しない理想像を前提にした理想論です。一方、実際に60件の求人と100名の人材がある中から探すと、全然違う、よりリアルな答えを返せる。理想論ではない回答が出てくるところまで体験してほしいと思います。」
セッション発言録 第3回・「ハンズオン②コード生成」の節「Geminiはキャンバスモードにすると最初から実行可能なコードを作ってくれて、Claudeは一番下のHaikuでも一瞬でこれを書きます。ところがChatGPTの無料版は、この難しくないお題すら、なぜか書きたがらない。数週間前からの挙動で、お金を払わない人には賢いことをさせない方針っぽい。一つのプラットフォームに依存することの怖さは、こういうところに出ますよね。」
セッション発言録 第3回・「ハンズオン③集合知」の節「この30数人を一つの組織に見立てて、みんなで知恵を出してみたらどうなるかをやってみたいと思います。お題は『AI活用で使っているコツは? ― 意識してやっていることも、そういえば無意識にやっていることも』です。」
セッション発言録 第3回・「ハンズオン③集合知」の節「100件近い意見の全体を眺めてまとめるのは、人間にはなかなか不可能です。でもAIなら全部読める。構造化AIが『これとこれは近い』『これはまだグループにしないでおこう』と考えながら塊を作っていって、確信の薄い塊は点線、確かな塊になると実線になります。あえて順位はつけず、分類だけをさせています。」
セッション発言録 第3回・「ハンズオン③集合知」の節「自分ができることって、この人のこれに役立つことかもしれない。自分が求めていることは、この30数人の中のこの人に手伝ってもらえばいいかもしれない。そんな発見がリアルタイムでできる場は、今まで普通になかったと思うんです。AIは300通りぐらいの結び目パターンを見出しています。」
セッション発言録 第3回・「ハンズオン③舞台裏」の節「最初は機能をてんこ盛りにしたものを構想して実際に作らせたのですが、作ってみたら全然使えないと分かって、大きく作り変えました。昔なら数か月、下手をすれば1年単位で構想するようなものが、ほんの1〜2週間で出来上がってくる。完成品を設計してから開発するのではなく、とりあえず作って試して改良する ― 何かを作るときのスピード感自体を、AIネイティブに捉え直さなきゃいけない。」
セッション発言録 第3回・「ハンズオン④人材戦略ゲーム」の節「800名の中堅商社で、AIによって250名分の仕事が浮く。その行き先をどう決めるかが重要だ、という前提です。削減するのか、既存職種にリスキリングするのか、AI新事業型に転換させるのか、外から採用するのか ― これを実際に配分として決めていただきます。」
セッション発言録 第3回・「ハンズオン④人材戦略ゲーム」の節「事業デザインは、誰か一人が大好きであれば、誰か一人が気に入らなくても成り立ちます。一方、人材戦略はこの四人の誰かにとってものすごい不満だと成り立たない。投資家が納得しなければ事業成長がないし、社員が不満なら人が離れていく。利害の衝突というゲームなんです。」
セッション発言録 第3回・「ハンズオン④振り返り」の節「この四人の声が辛辣すぎたので調整しますが、厳しいことだけを言うAIにも、甘い声だけのAIにもできる。リアルな人間ではないので調整できてしまう。事前にシミュレーションして、伝えてもらって、修正するところまでできること自体が、AI時代っぽいかもしれないですね。」
セッション発言録 第3回・「ハンズオン④振り返り」の節「事業デザインなら昔ながらの方法で顧客インタビューをしますが、社員に対してそれをやると『人事部がこう言っていた』と広まってしまう。バーチャルにヒアリングできてしまうというのは、それをやっている会社とやっていない会社で動きの速さが変わり、それ自体が競争優位性に関わってきます。」
セッション発言録 第3回・「振り返り」の節「皆さんが一つ一つ出した意見は、人間としての実体験に基づいているもので、AIのバーチャルな意見とはやっぱり違う。そこをどうコラボレーションさせるかを探索していくことが、AI時代の知というものだと思います。」
セッション発言録 第3回・「振り返り」の節「『AIと人間のコラボレーションだ』『AIは黒子でエージェンティックだ』と言うことはできるんですけど、実態は、今日体験していただいたようなものを、もうちょっと本当に使えるものにしていけるかどうか。それを解けるかどうかなのかなと思っています。」
セッション発言録 第3回・「振り返り」の節「人材戦略では、AIによって明らかに仕事を失う人が出てきます。社員だけを満足させて業績が伸びなければ意味がない。全員を満足させる会などなかなかない。それでも、仮想ヒアリングやAIツールで短時間に妥当性を洗い出し、環境変化についていく速さで人材戦略を改訂できることが、競争力につながる可能性があります。」
セッション発言録 第3回・「プロジェクト構造の改良」の節「申込動機とアンケートをAIでクラスタリングすると、だいたい4類型に分かれます。戦略を預かる人、現場と組織を動かす人、手を動かせる人、これから登る人。上級者と初心者という縦の差だけでなく、それぞれが持ち寄れるものと磨きたいものが違う。全員が、磨きたいものを手に入れると同時に持ち寄る側にもなれる場にしたいんです。WHYを持つ人とHOWを持つ人がつながる場に。」
セッション発言録 第3回・「プロジェクト構造の改良」の節「月2時間のセッションは、どうしても受け身になりがちで、技術に寄りがちで、ついていけない人も出る。アンケートでも『もっと手を動かしてやり切りたい』『やり切る体験がないと自分事にならない』という声が多かった。だから戦略レーンと実践レーンの2レーン×3段階(守破離)の挑戦セットを用意して、取り組んだ記録を挑戦ボードに持ち寄り、次回冒頭で紹介する。どちらか一方の一段だけでも立派な挑戦です。」
セッション発言録 第3回・「締めのディスカッション」の節「暗黙知のAI表出化、集合知の構造化、人材のAIマッチ、AI前提の人員配分を本気で進めた会社が現れた業界では、3年後、競争優位の源泉が入れ替わります。ベテランの経験知や社内イントラの蓄積、独自の文化、採用力、営業量 ― そのうち何が効かなくなり、何が効くようになるのか。実際に皆さんに書いてもらうと、『従来の知識蓄積から共感・言語化型へ』『知識の個人での抱え込みから共有へ』といった転換が立ち上がってきました。知を多く持つことより、引き出し・結び・流す力へ移っていくんです。」
セッション発言録 第3回・「次回案内」の節「第4回は実装レイヤーに戻って、物理世界との接地 ― フィジカルAIの Sense、Think、Act をLLMでどう扱うかです。もともと警備巡回で泥棒を探すゲームを考えていましたが、面白いけれど実用性が薄いのでやめて、地図や衛星写真で場所を探索するとか、画像認識でのAI接客みたいに、また違う視点で『AIでここまで広がる』とイメージが湧くものにしようと思っています。そして次回からは受け身ではなく参加型へ ― AIでこんなことをやった、作っている、困っているので一緒にやりたい、何でもいい発表枠(5〜10分)を新設します。」