AI戦略実践プロジェクトライブラリー
セッションの記録 / 第4回
第4回

物理世界に接地したAIは、競争のルールをどう書き換えるか

開催 08/18・09/03 論点 31件 [1E] 物理世界との接地と作用
航空写真をAIが読み進めて候補地を探す実践アプリと、Sense→Think→Actのループを通じて、誰でも簡単に作れる時代の競争優位がどこに宿るのかを架空企業のストーリーで考えた回。
収録しているのは登壇者(栗山)の講義中の発言のみです。参加者の発言は含みません。

この回で語られた論点

31件
講義で語られたことを、進行の順に並べています。 それぞれの論点から、その論点につないで書かれた記事をたどれます。

導入・テーマ

2件

テキストから物理世界へ(第4回の位置づけ)

セッション発言録 第4回・「導入・テーマ」の節

「初回は認知容量を超えていくという話、2回目は戦略をデザインする話、3回目は組織と暗黙知の話をしてきました。今日は物理世界を扱う ― 具体的には写真や地理のデータを扱います。物理世界はとても広いので、実際に手を動かして感じられて、かつ戦略にも反映できそうなテーマから着手します。」

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簡単に作れる=他社も作れる、という表裏

セッション発言録 第4回・「導入・テーマ」の節

「これを使って新事業を簡単に作れそうだと思いつつ、でも新事業を作れるということは他の人にも作れるんじゃないか。他社に売れるということは、その社内でも作れるんじゃないか。結局そこへ行き当たるわけです。簡単になったからこそ有象無象が参入する世界になる。」

導入・経営会議

1件

半年前の独自価値が、半年後には標準機能に

セッション発言録 第4回・「導入・経営会議」の節

「半年前・1年前には独自価値があってお客さんに喜んでもらえたものが、この半年でAnthropicやGemini、OpenAIが公式に出してきたり、先行する会社が標準の立場を取ってしまって、今更もう勝てなくなる。30年前にインターネットサービスを考えたとき『それAmazonやGoogleが作ったら負けるよね』と言っていたのと同じことが、いま起きる。」

導入・テーマ(事前資料と同文)

1件

経験の蓄積差が、そろそろ分かれる

セッション発言録 第4回・「導入・テーマ(事前資料と同文)」の節

「これらの問いは、誰も経験したことのない変化ゆえに、誰も経験的な答えを持っていません。先例がない、地図がない中で、手探りで確かめながら進むしかない。ただ、LLMの登場からもうすぐ4年、この手探りの経験を蓄積してきた人と経験ゼロの人の差が、そろそろ分かれつつある頃ではないでしょうか。」

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AIの進化地図

3件

「これは猫だ」から「この写真から考えられること」へ(VLM)

セッション発言録 第4回・「AIの進化地図」の節

「画像認識は昔からできました。CNNで、猫の写真を見て猫とラベルを付けることはできた。今日新しくできることは、これは猫だと分かる話ではなくて、LLMに目をつけたようなVLMが『この写真からこんなことが考えられる』と応える。認識することと考えることが、もう1セットになっているんです。」

音声認識も同じ ― 思考がついた

セッション発言録 第4回・「AIの進化地図」の節

「音声認識も10年前からありました。でも当時のスマートスピーカーは、単純に言葉を単語に置き換えられただけで、思考はついていなかった。いまのマルチモーダルは、音声を吹き込んだ時点で文字起こしするだけでなく、そこからこういうことが考えられる、という脳がついている。」

VLA ― 書かれた通りではなく、考えた通りに動く

セッション発言録 第4回・「AIの進化地図」の節

「昔からロボットはありましたが、あの世界は基本的にコンピューターに書かれた通りに自動制御していた。今やですね、考えた通りに動くということが可能になってきている ― これが大きな変化です。」

Sense→Think→Act

2件

Sense→Think→Act はあらゆる業種に共通

セッション発言録 第4回・「Sense→Think→Act」の節

「参加者にロボットを作っている会社や自動運転の方ばかりではないと思うので、あらゆる分野で使える話として ― どんな世界でも現場を理解する、お客さんを理解する。そういうプロセスは無限にあります。毎日店が動き、オフィスが動き、工事が動いている。それを誰かが考えて、意思決定したものを現実世界に返していく。このSense・Think・Actの3段階自体は、あらゆる業種で共通に生じるものです。」

ループの中に、人がどう入るか(Human-in-the-loop)

セッション発言録 第4回・「Sense→Think→Act」の節

「AIがどんどんループを回して動いていく世界になる。人間とAIが一対一で対話するのではなく、AIが回していく。でも回すこと自体に意味があるのではなく、その中に適切なタイミングで人間が入っていかなければいけない ― そこが大事です。」

戦略への視座

2件

競争軸は「ループの回転速度」へ

セッション発言録 第4回・「戦略への視座」の節

「センス・シンク・アクトのループをどのくらい早く回せるのかが、もう勝負になってくる。競争優位の源泉が、今までとは違うところに移っていく。そしてデジタルとフィジカルをどう組み合わせればうまくいくのか ― 紙の上では分かるけれど、実際どんな姿になるかは作らない限り分からない。作って『この世界ならいける』と早めに見極められるかの勝負です。」

現場に眠る映像・音声・図面が競争資産に(スライド)

セッション発言録 第4回・「戦略への視座」の節

「『データ優位』の定義が変わる。蓄積済みのテキストではなく、現場に眠る映像・音声・図面が競争資産になる。デジタルで出遅れた『現場を持つ企業』にこそ反撃の機会がある。製造・物流・医療・建設など、IT化しにくいとされた産業がAIの主戦場になり、モデルは共通化へ向かい、価値は独自データ×業務文脈の側に移る。」

ストーリー(経営会議)

2件

チャットAIと「業務が回る仕組み」の段差

セッション発言録 第4回・「ストーリー(経営会議)」の節

「試作は数週間・数百万円で形になりました。数年前なら億単位・年単位の案件です。ただ正直に言えば、チャットAIに聞くだけの姿と、業務が回る仕組みとの間には、思った以上の段差がありました。そこを越えたものが、いま手元にあります。」

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「AIで作れるもの」の値段は下がり続ける

セッション発言録 第4回・「ストーリー(経営会議)」の節

「冷静に見よう。同じものは競合もすぐ作れるし、大手は結局、自分で作る道を選ぶだろう。買ってくれるとすれば中堅中小がひしめく業種か。だが1社いくらで売れて、何社取れる?『AIで作れるもの』の値段は、下がり続けているぞ。」

ストーリー(問いの設定)

1件

4つの問い(作れるか・勝てるか・内製に勝るか・続くか)

セッション発言録 第4回・「ストーリー(問いの設定)」の節

「作れるか ― 参入に必要なものが何から何へ変わったか。勝てるか ― 優位の源泉はどこに移ったか。内製に勝るか ― 顧客が内製できる時代に、売り手として何を担うのか。続くか ― 一時的な優位と構造的な優位の分かれ目はどこか。どれも、この企業だけの話ではありません。」

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ストーリー解説

2件

生産性改善 → 独自価値 → 新事業の3段階

セッション発言録 第4回・「ストーリー解説」の節

「こういうものを作ると、最初はまず生産性改善です。残業しなくてよくなる。次のステップは、今までできなかったことができるという独自価値 ― コーディネーターが思いつかなかった組み合わせまで提案できる。3つ目のステップが、それを外販できるという話。両方ともあらゆる会社で使えるものなので、外販すれば、いまの会社の10倍の規模に成長する可能性だってある。」

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内製が商談の壁になっている

セッション発言録 第4回・「ストーリー解説」の節

「AIサービスを大手向けに『こんなのがあります』と持っていっても、特に大手企業ではいま、社内のAIサービスは全部Anthropicか OpenAIかで内製しよう、という話が始まっていて、その結論が出るまで買えないんだよね、という話にされてしまう。この内製が、いま商売の壁になっている。」

ハンズオン①場所探し

3件

国土地理院の航空写真という選択(データ調達の実務)

セッション発言録 第4回・「ハンズオン①場所探し」の節

「この写真は国土地理院が日本全国のデータをタダで公開してくれているものです。Google Mapsでも同じことはできますが、まず有料であることと、商用利用がグレーであること。国土地理院はデータ取り放題なので、今回はこちらを使っています。更新はGoogleほど新しくはないですが、いずれにせよ無料でいくらでも使えます。」

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軽量モデルの速さが「使えるか」を決める

セッション発言録 第4回・「ハンズオン①場所探し」の節

「1枚を見るのにほんの短時間で見ていますよね。軽量モデル(Flash-Lite)を使っているからです。重いモデルにすると1枚につき何十秒とかかる。でも、こういうディテールこそが、実際に使えるものになっているかどうかの肌触りになるわけです。」

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どこまで作れば実務で役に立つのか

セッション発言録 第4回・「ハンズオン①場所探し」の節

「最初の選び方次第で厳しく条件を取ってしまうと、うまく候補が選べないこともある。僕も30回繰り返したのに1か所しか条件に合わないと言っている。この辺がリアリティですよね ― どこまで作ればこのロケーションファインダーが役に立つのか、という。」

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ハンズオン②暮らし提案

3件

人間が7時間かかる分量を、AIが読む

セッション発言録 第4回・「ハンズオン②暮らし提案」の節

「カタログは860点あって、1点あたり100文字ぐらいなので、全体で7万文字分。1点30秒で見ても7時間かかる分量です。これは人間が読める量を超えている。それをAIにさせてみましょう、という話です。」

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画像を「読む」のは安い ― スケーラビリティの根拠

セッション発言録 第4回・「ハンズオン②暮らし提案」の節

「1回で70円ぐらいかかりますが、画像を書くところで70円中50円使っていて、画像を読むところは、あれだけ大量に読んでも5円だけなんですね。ビジネスとしてのスケーラビリティとして、大量の画像を読むのは実は結構安い。もっともっと大量の画像を読ませたって、ビジネスとして成り立つんだというところが見えてくる。」

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モデル選定は測ってから決める

セッション発言録 第4回・「ハンズオン②暮らし提案」の節

「最初は適当に書かせて自分で実行してみて、ここは時間がかかりすぎたからテストしてみて、とお願いして、テスト用のコードを書かせて、いろんなモデルで画像読み込みのスピードと精度を全部測った。その上でFlash-Liteでも画像読み込みは十分クオリティが出ていて、速くて安いと判断して選んでいます。」

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議論の中で

3件

2023年に1000万円で売れたものが、いまは売れない

セッション発言録 第4回・「議論の中で」の節

「同じようなものを2023年頃に『AIでこんなことができます』と外販していた覚えがあって、1000万円ぐらいで。当時はエンジニアリングとデザインが分かれば作れるけれど素人には作れないものだったので、その値段で売れたんです。今はもう作れてしまいますよね。もう売れない。」

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AIは「ひっくり返す」発想を出してくれない

セッション発言録 第4回・「議論の中で」の節

「前提そのものをひっくり返すような発想は、AIと壁打ちしていても出てこない世界ですよね。AIは指示者にちゃんと追随するように作られている結果、そういう反転の発想は思いつきもしないし、提案もしてくれない。そこがある種、人間としての独自価値になる。」

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作るのは大変、フィードバックは安くて効く

セッション発言録 第4回・「議論の中で」の節

「作るのはめちゃくちゃ大変で苦行です。一方でフィードバックを返すのは、その時間だけで済むので簡単だし、受け取った側にとってはとても価値がある。人にフィードバックを与えるのは生産性が高くて、短い時間で役に立てる楽しい時間なんです。だから早めに持っていくのが一番おすすめです。」

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振り返り(参加者の感想への応答)

1件

感想が即座に反映される = リアルワールドへの接地

セッション発言録 第4回・「振り返り(参加者の感想への応答)」の節

「『皆さんの感想をもとに進化している感じがする』という声をいただきました。これがある種、リアルワールドへの接地なのかもしれないですよね。机上の設計は作れるけれど、実際に使っていただいて、感想をいただいて、それをもとに変わっていく。それがまさにループです。感想の集計自体が、ものすごく早くできるようになった分だけ。」

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次回案内

1件

次回予告:第5回=戦略検討自体をAIで/第6回=戦略構想力の可視化(9/3更新)

セッション発言録 第4回・「次回案内」の節

「第5回は戦略をどう作るかをもっとディープに。小売業あたりを題材にすると取り組みやすいかなと。AIが当たり前になったときどんな戦略を考えるべきか、可能性は山ほどあるので、自分個人で考える段階、AIと対話的に深める段階、そして仕組みで100回でも200回でもアイデアを出させる段階を比べたい。第6回は、AIをどう使うかは人によって全然違うはずなのに、他の人がどう使うかは見えない ― 最初にどう問い、返ってきた反応にどうフィードバックを返して構想を磨くか。じっくり長文を書く人もいれば、短いサイクルで回す人もいる。隣の人が持っているAI戦略ノウハウをお互いに見える化できたら面白い。10分間の壁打ちを折れ線グラフで可視化して、スパート型か長距離ランナー型か、どこに良いものへたどり着くノウハウがあるのかを見られたらと構想しています。」

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ハンズオン①(手元のAIで試す)

1件

素のチャットAIは「誰も知らない穴場」を出せない(9/3追加)

セッション発言録 第4回・「ハンズオン①(手元のAIで試す)」の節

「手元のAIに聞くと、ある程度ストーリー立てて考えて提案してくれます。とはいえ、基本的にはテキストで考えているので、インターネット上にあるあらゆるテキストを読んだ上で考えている。だから誰も知らない穴場までは提案してこないんです。誰かがブログに書いているような、ある程度有名なものが提案されてくる。」

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ハンズオン①ロケーションファインダー

1件

一度の指示文で作れるものと、完成度の段差(9/3追加)

セッション発言録 第4回・「ハンズオン①ロケーションファインダー」の節

「こんなことは昔は絶対にできなかった。何千万円、何億円かけても開発できなかったことが、ほんの数週間でできる。ただしこれを作るには、AIにどう認識させるか、どうズームさせるか、裏側で相当な工夫をしています。皆さんがさっき手元で一回の指示文で作ったものが、同じレベルに一日でたどり着けるわけではない。その難しさは、続きを作ろうとすると気づいていただけると思います。」

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議論の中で

1件

誰でも作れるように見えて、誰も売りに行かない(9/3追加)

セッション発言録 第4回・「議論の中で」の節

「誰でも作れるように見えて、実際に値段をつけて営業してやろうというところまで挑戦する会社がどこも出てこないのであれば、最初にやったもの勝ちかもしれない。インターネットも、今から思えば誰でも作れたと言うけれど、結局アマゾンを作ろうと思ったのはジェフ・ベゾスだけだった。徹底してやり切ったからこそ、というものかもしれません。」

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手を動かした後の議論

1件

独自データと、顧客との関係性(9/3追加)

セッション発言録 第4回・「手を動かした後の議論」の節

「地図のほうはオープンデータなので誰でもできる。でも暮らし提案のほうは、顧客からデータをいただけるという関係性があるからこそ、他社にはできないものができる。独自データかどうかという観点がありますね。一方で、独自情報があるがゆえに ― 誰かにとっての機密情報だと ― 売りにくくなるという面もある。」

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どの領域を扱ってきたか8/15
AIが事業に与えるインパクトを3つの層で捉え、層ごとに5つの切り口を 置いた枠組みです。扱った領域は、その回へ。
第1層実装方法(業務・施策)
1A人間の認知容量の解除第1回
1B人間の時間制約の解除
1C人間の可能域の拡張
1D人間理解と接点の深化
1E物理世界との接地と作用第4回
第2層組織変革(事業組織)
2A情報流通の血流化第3回
2B創造的活動の加速器
2C組織学習と人材育成の統合
2D経営の知的オペレーション機構化第3回2E事業戦略と組織戦略の共転換第3回
第3層戦略転換(産業・事業)
3A顧客価値のシフト第2回3B顧客接点のシフト第2回3C差別化資産のシフト第2回
3D時間軸戦略のシフト
3E収益構造と戦場のシフト
枠組みの全文は設計思想に。